暗号資産市場は、トランプ大統領の関税政策発表や中国AI企業の台頭により大きく揺れ動いた。これらの要因が重なり、ビットコインとイーサリアムのETFからの資金流出が顕著となった。
特に、ビットコインETFは単日で約6億8,000万ドルの流出を記録し、イーサリアムETFも同様の傾向を示している。投資家は市場の不確実性を背景にリスク回避の姿勢を強めており、今後の市場動向に注視が必要である。
ビットコインとイーサリアムETFの資金流出が示す市場の変調
ビットコインとイーサリアムのETFからの資金流出が続いている。特に、イーサリアムのETFは純流入がゼロとなり、昨年米国で新たなETFが承認されて以来初めての事態となった。CoinSharesのデータによれば、先週の暗号資産市場は大きく変動し、特にイーサリアム関連の投資資金は一時的に完全に消失した。これは、米国の政策リスクや国際的な市場の混乱が影響を及ぼしている可能性が高い。
イーサリアムの価格は米国東部時間の月曜日に2,368ドルまで下落し、その後2,740ドルまで回復したものの、市場のセンチメントは依然として低迷している。CoinSharesのリサーチ責任者であるジェームズ・バターフィル氏は、「ETH投資商品の純流入がゼロになるのは極めて珍しい」と指摘しており、市場の構造的な変化が進んでいることを示唆する。これにより、暗号市場の投資環境はますます不透明になっている。
この資金流出の背景には、複数の要因があると考えられる。米国の貿易政策の変更、テクノロジー株の売却、さらには世界的な景気減速懸念などが投資家のリスク回避姿勢を強めた結果、暗号資産の売却が進んだ可能性がある。特に、暗号市場は従来の金融市場と連動する動きが強まっており、マクロ経済の影響を受けやすい構造となっている。
米中経済対立とAI市場の影響が暗号資産に波及
暗号市場の混乱の背景には、中国のAI企業DeepSeekが発表した新しい大規模言語モデルが関係している。DeepSeekの技術は米国の主要AI企業よりも低コストでトレーニング可能とされており、この発表を受けて、米国のテクノロジー株が大幅に売られた。結果として、投資家はリスク回避を強め、暗号資産市場にも影響が及んだ。
テクノロジー分野の動向は暗号市場と密接に関係しており、特にイーサリアムはスマートコントラクトを支える基盤として、AIやブロックチェーン技術と深く結びついている。そのため、AI関連の大きな発表が投資家心理に影響を及ぼし、暗号市場全体の流れを変えることがある。今回のDeepSeekの発表によって、米国と中国の技術競争が激化する中で、テクノロジーセクターへの投資マインドが揺れ動いた。
一方で、ビットコインは比較的安定した推移を見せ、週の後半には約10億ドルの資金流入が確認された。CoinSharesのデータによると、ビットコイン関連の投資ファンドには4億8,600万ドルが流入しており、他の暗号資産と比較して安定した資産としての魅力を維持している。AI市場の動向が今後も暗号市場に与える影響は大きく、特に米中の技術競争の行方が市場に及ぼす影響には注視が必要である。
トランプ前大統領の関税政策が市場の流れを変える
トランプ前大統領が新たな関税政策を発表したことが、暗号市場の変動を加速させた。トランプはカナダ、中国、メキシコに対する関税措置を発表し、これが市場の不安定要因となった。特に、暗号資産は地政学的リスクの影響を受けやすく、投資家のリスク回避姿勢を強める要因となった。
しかし、その後のトランプとメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領との会談で、関税措置の延期が決定された。これを受けて、市場は一定の回復を見せ、ビットコインは4%上昇し101,843ドルに達した。一方、イーサリアムは引き続き低迷し、過去24時間で8%の下落を記録している。政策リスクが暗号市場にどのような影響を与えるかは、今後も注視する必要がある。
市場のセンチメントは依然として不安定であり、特に政治的な要因が直接価格に影響を与えるケースが増えている。暗号市場はかつて「伝統的な金融市場と異なる動きをする」とされてきたが、現在はマクロ経済や地政学的リスクに敏感に反応する傾向が強まっている。この変化は今後の市場戦略にとって重要なポイントとなる。
Source:Decrypt