2024年の仮想通貨ETFの承認は、金融業界にとって画期的な一歩だった。しかし、専門家は「完全な需要」はまだ見えていないと指摘する。ウォール街の機関投資家の本格参入を妨げる最大の要因は、米国の規制の不透明さだ。

ロンドンで開催されたデジタル資産フォーラムでは、SkyBridge創設者アンソニー・スカラムッチ、CF Benchmarks CEOスイ・チョン、Bullishの機関投資部門責任者クリス・タイラーが登壇。パネルディスカッションでは、ウォール街の仮想通貨市場への適応は初期段階にあり、本格的な資本流入にはさらなる法整備が必要との見解が示された。

仮想通貨市場のボラティリティ構造にも変化が見られ、取引のピークが米東部時間の午前9時から10時に集中する傾向が強まっている。これにより、ウォール街の影響が大きくなっていることが示唆される。一方、オーストラリアのMonochrome Groupがシンガポール市場への仮想通貨ETF展開を開始するなど、東南アジア市場の成長が加速。今後、仮想通貨ETF市場の拡大は、米国規制の行方とともに注目される。

仮想通貨ETF市場の本格成長には何が必要か

仮想通貨ETFの市場規模は拡大を続けているが、本格的な成長にはいくつかの要素が欠かせない。最大の課題は規制の不透明さであり、特に米国ではSEC(米証券取引委員会)の方針が市場の流れを左右する。SECはビットコインやイーサリアムのETFを承認したものの、アルトコインのETFについては慎重な姿勢を崩していない。

一方で、米国外の市場は異なる戦略を取っている。オーストラリアのMonochrome Groupがシンガポール市場への進出を開始するなど、東南アジアでは規制の枠組みが整い始めている。この動きは、機関投資家が規制の安定した地域へ資本を移動させる可能性を示唆しており、今後の市場展開の重要な指標となる。

また、仮想通貨市場のボラティリティにも変化が見られる。ビットコインの価格変動がウォール街の取引時間帯に集中する傾向が強まり、金融機関の影響力が増している。これは、仮想通貨が伝統的市場とより密接に結びついていることを示しており、今後の成長には、流動性の向上や取引の安定性が鍵を握るだろう。

新たなETF候補とウォール街の関心

仮想通貨ETF市場は、ビットコインとイーサリアムの枠を超えて拡大しつつある。現在、ドージコイン(DOGE)、XRP、ソラナ(SOL)といった仮想通貨が次のETF候補として注目されている。特にソラナは、スマートコントラクト機能を持ち、DeFi(分散型金融)市場での活用が進むなど、機関投資家の関心を集めている。

伝統的金融機関の関心は、仮想通貨そのものだけでなく、仮想通貨市場の仕組みにも向かっている。24時間365日の取引、即時決済、分散型ネットワークの透明性は、従来の金融システムにはない特性だ。これらの要素が、今後の金融市場にどのような影響を与えるのかが焦点となる。

さらに、仮想通貨市場の拡大とともに、規制の枠組みの進展も求められる。例えば、米国では11月までに法改正が進む可能性が指摘されている。規制の明確化が進めば、新たなETFの登場も加速するだろう。ウォール街が仮想通貨を本格的に受け入れるには、さらなる制度の整備と市場の透明性が不可欠だ。

トランプ政権の影響と仮想通貨業界の未来

米国の仮想通貨市場は、政治的な影響を強く受ける。特にトランプ政権が再び誕生した場合、規制方針に大きな変化が生じる可能性がある。しかし、仮想通貨業界の成長は、政治の動向だけで決まるものではない。スカラムッチは「仮想通貨支持派の影響力が増している」と述べており、業界内部の勢力が市場を牽引していく可能性が高い。

また、規制の動向が変わったとしても、機関投資家の仮想通貨市場への関与は後戻りしないと考えられる。既に大手金融機関が市場に参入しており、技術的な進歩や金融商品の多様化が進めば、仮想通貨市場は一層成熟していくだろう。

今後の市場成長には、規制の整備、金融機関の適応、新たな金融商品の登場が不可欠だ。これらの要素がどのように組み合わさるかが、仮想通貨ETF市場の未来を左右することになるだろう。

Source:Decrypt