ビットコインETF市場における機関投資家の影響力が急速に拡大している。2024年第4四半期末時点で、機関投資家のビットコインETF保有額は約270億ドルに達し、総資産の25.4%を占めるまでになった。これは前四半期比で113%の増加となり、ETFを通じたビットコイン投資の動向が機関投資家主導で進んでいることを示している。

特にブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)への関心が顕著であり、機関投資家の保有額は年間で4倍以上増加し、160億ドルに達した。フィデリティのFBTCも同様に急成長しており、四半期ベースでほぼ100%の増加を記録している。これに伴い、従来の主要ETFであったグレースケールのGBTCからの資金流出も加速している。

市場全体の規模も拡大を続けており、ブラックロックのIBITのAUMは564億ドルに達し、米国のスポットビットコインETF市場全体のAUMの約半分を占める水準にまで成長した。機関投資家の存在感が強まる中、今後の市場動向が注目される。

機関投資家の資金流入が示す市場の安定化と成長期待

ビットコインETFに対する機関投資家の関与が強まる中、市場の安定性と成長期待が高まっている。2024年第4四半期のデータによると、ETFを通じたビットコイン投資の総額は788億ドルに達し、四半期ごとに4.1%ずつ増加している。この傾向は、ビットコイン市場が単なる投機的資産ではなく、安定的な投資対象として機関投資家に評価されつつあることを示唆する。

特に、ブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)やフィデリティのFBTCの急成長は、伝統的な金融機関がビットコインETF市場に本格的に参入し始めた証拠といえる。こうしたETFの拡大は、過去の市場変動と比較するとボラティリティの低下に寄与する可能性がある。なぜなら、機関投資家は短期の価格変動よりも中長期的な資産運用を重視する傾向が強いため、市場の安定性が増すと考えられるからだ。

加えて、アブダビのMubadala Investment Companyやウィスコンシン州投資委員会(SWIB)といった公的機関も、ビットコインETFを積極的に取得していることが確認されている。これにより、ビットコイン市場への参入障壁が下がり、新たな機関投資家が続々と参入する可能性が高まる。今後、この動きが続くかどうかは、各国の規制動向や市場環境の変化に左右されるが、ETF市場が成長し続けることで、ビットコインの資産クラスとしての地位がさらに確立される展開も考えられる。


既存のビットコインETFとの差別化が加速する背景

ブラックロックのIBITとフィデリティのFBTCが急成長を遂げる一方、グレースケールのGBTCは明確な苦境に立たされている。かつてビットコインETFの主導的存在だったGBTCは、機関投資家の資金流出が続いており、ウィスコンシン州投資委員会(SWIB)も2024年12月末時点でGBTCのシェアを全て売却し、IBITへ資金を移している。

その背景には、ETFの運用コストの違いが影響していると考えられる。GBTCは従来から管理手数料が高いことで知られており、IBITやFBTCがより低コストで提供されることで機関投資家の資金がシフトしている可能性がある。特に、大規模な資金を運用する機関投資家にとって、長期的なコスト削減は運用成績に大きな影響を与えるため、低コストETFへの移行は合理的な判断といえる。

また、ブラックロックやフィデリティは、伝統的な金融市場において強いブランド力を持つため、規制当局や投資家からの信頼を得やすい。これに対し、グレースケールは暗号資産業界に特化した企業であるため、従来の金融機関と比べると、より広範な投資家層を取り込むのが難しくなっている。このような市場環境の変化により、ETFの競争構造が明確になり、機関投資家は単なる「ビットコイン投資」ではなく、「どのETFを選ぶか」に重点を置く傾向が強まっている。

今後、機関投資家向けのビットコインETF市場はさらに細分化が進む可能性があり、運用手数料の低下やサービスの充実が競争の焦点となると考えられる。ETFの成長が続く中で、各運用会社がどのように差別化を図るかが、今後の市場動向を決定づける要素となりそうだ。


ビットコインETF市場拡大がもたらす新たなリスクと機会

ビットコインETF市場の拡大は、新たな機会を生み出す一方で、新たなリスクも内包している。機関投資家の参入が急増することで市場が安定化する可能性があるものの、一極集中が進むことで、流動性リスクや価格操作の懸念が指摘されることもある。

現在、ブラックロックのIBITのAUMは564億ドルに達し、米国で取引されている他のスポットビットコインETFの合計とほぼ同規模となっている。このような一極集中が続けば、IBITの価格動向が市場全体の流れを決定づける状況になる可能性がある。特に、仮にブラックロックが大規模な売却を行った場合、市場全体が大きく変動するリスクがあるため、その影響力は今後さらに注視されるべき要素となる。

また、ビットコインETFの成長に伴い、規制当局の監視も強まることが予想される。各国の金融当局は、機関投資家の関与が拡大することで市場の健全性が確保されるかどうかを慎重に見極めている。米国証券取引委員会(SEC)をはじめとする各国の規制機関が、ETFに関する新たなルールを策定する可能性もあり、それが市場にどのような影響を及ぼすかは注目されるポイントである。

一方で、ビットコインETFの普及が進むことで、より幅広い投資家層の参加が可能となる点は、ポジティブな側面といえる。これまで暗号資産市場に直接投資することが難しかった法人や金融機関が、ETFを通じて簡単にビットコイン市場に参入できるようになり、市場全体の規模拡大につながる可能性がある。

こうしたリスクと機会を天秤にかけながら、機関投資家の動向を注視することが、今後の市場の安定性や成長性を見極める上で重要となる。ビットコインETFの拡大が単なる短期的なブームに終わるのか、それとも長期的な市場基盤の強化につながるのか、引き続き注目が必要である。

Source:CryptoSlate