ドナルド・トランプ大統領がカナダ、メキシコ、中国に対する新たな関税を発表し、貿易戦争の懸念が高まる中、主要な暗号資産が急落している。ビットコインは5%以上下落し、9万6,879ドルとなった。イーサリアム(ETH)は10%下落し2,940ドル、XRPは15%減の2.54ドル、ソラナ(SOL)は12%下落し200ドルを下回り、ドージコイン(DOGE)も16%の下落で0.27ドル以下となった。トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」で「痛みがあるか? そうかもしれない」と投稿し、さらなる市場の不安を招いた。
これらの動きにより、過去24時間で暗号資産の先物ポジションの清算額は市場全体で900億ドルを超え、ビットコインの清算額は1億8,000万ドルに達している。
仮想通貨市場に連鎖する影響──900億ドル規模の清算がもたらす余波
トランプ大統領の貿易政策が市場の不安を増幅させる中、仮想通貨市場では24時間で900億ドル超の清算が発生した。この大規模な清算は、強気相場を支えていた信用取引やレバレッジを利用した投資家に大きな影響を及ぼしている。ビットコインの清算額は1億8,000万ドルに達し、短期間での資金流出が加速した。
信用取引が膨張する仮想通貨市場では、一部の投資家がリスク管理を怠ることで、急激な下落時に連鎖的な清算が発生しやすい。今回の暴落は、関税引き上げという伝統金融市場に起因する要因がトリガーとなったが、仮想通貨市場独自のレバレッジの高さが下落を加速させた可能性がある。
また、機関投資家の動向も注目される。米国での現物ETFの承認後、機関投資家の流入が進んでいたが、短期的なボラティリティの高まりによって、一部のファンドは資金を引き上げているとの見方もある。こうした資金の流出が続く場合、仮想通貨市場のボラティリティがさらに拡大し、価格の安定性を損なう恐れがある。
今後、市場がどのように反応するかは不透明だが、大規模な清算が続けばさらなる価格下落を招く可能性がある。一方で、市場が底打ちするタイミングを見極める動きも出ており、投資資金の回帰が起これば短期間での反発も視野に入る。市場の動向を左右するのは、トランプ政権の追加政策や関税措置に対する各国の対応となるだろう。
政治リスクと仮想通貨の関係──トランプのSNS発言が価格変動を引き起こす理由
トランプ大統領は、これまでもSNSでの発言を通じて市場を動かしてきた。今回の「痛み(Pain)」発言も例外ではなく、発言直後に仮想通貨市場はさらに不安定な値動きを見せた。政治的な発言が仮想通貨市場に与える影響は、伝統的な金融市場よりも大きい傾向にある。
その理由の一つとして、仮想通貨市場のセンチメントが投機的要因に強く左右される点が挙げられる。特にミームコインや政治色の強いトークンは、特定の人物や出来事に紐づいた動きをすることが多い。今回のケースでは、トランプ支持者の間で人気のSolanaベースの「TRUMP」トークンが大きく売られたことが象徴的だ。
また、規制リスクも市場の懸念材料となる。トランプ政権が再び暗号資産に厳しい規制を課す可能性があるとの見方が広がる中、機関投資家の一部は慎重な姿勢を強めている。加えて、中央銀行デジタル通貨(CBDC)との競争が激化する中、米国政府が民間の仮想通貨に対する監視を強化する可能性も指摘されている。
トランプ大統領のSNS発言が引き金となり、政治的な要因が仮想通貨市場のボラティリティを増幅させる事例はこれまでにもあった。今回の関税措置とそれに伴う発言がもたらす影響は一時的なものなのか、それとも長期的なトレンドを形成するのか、今後の政策動向と市場のセンチメント次第で変化する可能性がある。
Source:Decrypt