『The 7th Property: Bitcoin and the Monetary Revolution』の著者であり、公認金融アナリスト(CFA)であるエリック・ヤケス氏は、2月10日にリップル社とその暗号資産XRPに対する厳しい批判を展開した。ヤケス氏は、リップルが「ビットコインが解決するために生まれた問題そのもの」であり、「偽の金を印刷している」と非難。
さらに、リップルの技術やトークン経済が中央集権的であり、ビットコインの理念に反すると指摘した。これに対し、元リップル開発者のマット・ハミルトン氏は、ヤケス氏の主張を「誤情報」として反論し、リップルとXRPの違いや、XRPレジャーの特性について説明した。この論争は、暗号資産業界における中央集権対分散型の議論を再燃させる可能性がある。
リップルへの批判の背景とヤケス氏の主張の詳細

エリック・ヤケス氏のリップル批判は、単なる感情的な発言ではなく、同氏が長年にわたり研究してきたビットコインの理念に基づくものだ。ヤケス氏は、リップルのトークンXRPの供給モデルやガバナンス構造を「中央集権的」と位置付け、従来の金融システムと本質的に変わらないと批判している。
彼の指摘の一つは、XRPの発行形態と管理体制にある。XRPは既に全供給量が発行されており、その大部分をリップル社が管理している。この点がビットコインと異なり、リップル社の意向によって市場の流動性や価格に影響を与え得る仕組みだと指摘した。また、リップル社が保有するXRPを売却しながら事業を継続している点についても、持続可能な経済モデルとは言えないと批判している。
さらに、ヤケス氏はリップルが掲げるユースケースに疑問を呈している。リップル社は国際送金の効率化を目的とするが、既存の金融機関が必ずしもXRPを必要としていないという主張だ。ステーブルコインやビットコインのような他の技術の方が、より実用的な代替手段になる可能性が高いとし、リップルが主張する「金融革命」というコンセプト自体に疑義を唱えた。
この批判の根底には、ビットコインが掲げる「非中央集権」という価値観がある。ヤケス氏は、リップルが中央集権的な管理体制を維持しながら、ビットコインの理念を流用していることを問題視しており、仮想通貨業界全体がリップルの影響力に対して慎重になるべきだと主張している。
XRP支持派の反論とコミュニティの反応
一方で、リップルの支持者たちはヤケス氏の主張を強く否定している。特に元リップル開発者のマット・ハミルトン氏は、ヤケス氏が「リップル社とXRPを混同している」と批判し、両者は明確に異なるものであると説明した。リップル社はブロックチェーン関連の企業であり、XRPは独立した仮想通貨であるため、リップル社の活動をもってXRPそのものの価値を判断するのは誤りであると主張した。
また、ハミルトン氏はXRPのボラティリティについても言及し、XRPレジャー上の取引は高速で決済されるため、価格変動の影響を受けにくいと説明した。XRPの主要な利点の一つは、迅速な決済能力にあり、従来の銀行送金や他の仮想通貨とは異なる独自のユースケースを持つと反論した。
さらに、リップル社の戦略についても擁護の声が上がっている。リップルが銀行や金融機関と提携することで市場を開拓しようとしているのは、新興企業が流動性を確保するために行う一般的な戦略であり、これ自体を詐欺と断定するのは早計だという意見もある。リップルのネットワークは分散化が進んでおり、一部のノードが取引を管理していることを問題視するのは、技術的な理解が不足している可能性があるとの指摘も見られた。
これらの反論を受け、XRPコミュニティはヤケス氏の発言を「ビットコイン支持者による意図的な誇張」として一蹴している。リップルは多くの金融機関と提携し、国際送金における実用化が進んでいることを強調し、ビットコインとは異なる価値を提供するプロジェクトであることを改めて主張している。
仮想通貨業界における中央集権vs分散化の論争
この論争は単なる企業批判にとどまらず、仮想通貨業界全体における中央集権と分散化の本質的な議論に発展している。ビットコインは創設当初から非中央集権性を掲げ、政府や企業による管理を排除する思想を持っている。一方で、リップルのように企業が開発を主導する仮想通貨は、既存の金融システムとの融合を図りながら成長を目指している。
この構図は、仮想通貨業界が今後どのような方向へ進むのかを占う重要な要素となる。完全な分散型ネットワークは理想的だが、規模の拡大とともに技術的・運営上の課題が生じる。一方で、中央集権的な管理がある程度機能すれば、実用化のスピードは加速するが、それが本当に仮想通貨の理念に沿っているのかという根本的な問いが生まれる。
今回のヤケス氏とXRP支持派の論争は、この業界の未来を考える上での試金石となる可能性がある。仮想通貨のユースケースが拡大する中で、ビットコインのような完全分散型の仕組みが主流になるのか、それともリップルのようなハイブリッド型のモデルが普及するのか、今後の市場の動向が注目される。
Source:Bitcoinist.com