暗号資産市場が再び大幅な下落を見せている。ビットコインは心理的節目である95,000ドルを下回り、イーサリアム、ソラナ、XRPといった主要アルトコインも軒並み値を下げた。

この背景には、トランプ大統領の関税政策によるインフレ懸念や、LIBRAミームコインの詐欺的行為による市場の信頼低下があるとされる。さらに、FRBの金融引き締め政策も投資家心理に影響を与えており、今後の市場動向には注意が必要だ。

米国経済の不透明感が暗号市場に与える影響

ビットコインをはじめとする暗号資産市場の急落は、単なる市場の調整ではなく、米国の経済政策が根底にある可能性が高い。ドナルド・トランプ大統領が掲げる貿易政策は、国内産業を保護する目的であるものの、関税引き上げがインフレを加速させるリスクがある。特に中国からの輸入品に対する10%の追加関税は、サプライチェーンに大きな影響を及ぼし、米国経済全体のコスト上昇を招く。

このような状況では、リスク資産とみなされる暗号資産市場からの資金流出が進みやすい。加えて、米連邦準備制度(FRB)の金融政策も市場のセンチメントを大きく左右している。現在、市場では利下げ期待が後退しつつあり、年内の利下げが1回にとどまるとの予測もある。この見通しは、暗号市場の流動性を低下させる要因となるため、投資家心理の悪化を加速させている。

また、米国政府による暗号資産規制の強化も、今回の市場の下落に拍車をかけている。規制当局は、大手取引所への監視を強め、特にステーブルコインや分散型金融(DeFi)プロジェクトに対して厳格な規制を導入する可能性が指摘されている。このような背景から、投資家は市場への資本投入を慎重に行う傾向が強まり、結果として暗号資産市場全体の売り圧力を高める要因となっている。

ミームコインの影響力と投資家心理の変化

市場の下落には、暗号資産特有の要因も絡んでいる。その一例がミームコインの影響であり、最近のLIBRAミームコインの騒動が代表的だ。このコインは短期間で2000%以上の上昇を見せたが、その後、創設者とみられるウォレットが大量のトークンを売却したことで市場が崩壊した。このような「ラグプル」と呼ばれる手法は、過去にも数多く発生しており、市場全体の信頼性を損なう要因となる。

LIBRAの騒動が特に影響を与えたのは、ソラナ(SOL)市場である。ソラナブロックチェーン上で発行されたこのミームコインの崩壊により、多くのトレーダーが損失を被り、流動性が急激に低下した。さらに、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領がこのミームコインを支持するような発言をしたことで、一時的に注目が集まったものの、その後の価格暴落により暗号市場全体のセンチメントが悪化した。

こうした事例が繰り返されることで、特に初心者の参入が慎重になる傾向が強まり、市場の流動性が縮小する可能性がある。過去には、ドージコイン(DOGE)やシバイヌ(SHIB)が同様の現象を起こしたが、これらは一定のコミュニティを形成し、安定した取引量を確保していた。しかし、LIBRAのような急騰型のミームコインは投機的な要素が強く、信頼回復には時間を要すると考えられる。

清算の連鎖が市場の回復を阻む要因

今回の市場下落では、先物市場における大量の清算が発生している。特にロングポジション(価格上昇を見込んだ取引)が大きく損失を被り、過去24時間で2億7900万ドル以上が清算されたとされる。これに対し、ショートポジション(価格下落を見込んだ取引)の清算は約5500万ドルにとどまり、下落に賭けた投資家が優位に立つ展開となった。

このような先物市場の動きは、スポット市場にも波及する可能性が高い。大量のロングポジションの清算は、さらなる売り圧力を生み出し、市場の回復を遅らせる要因となる。ビットコインの価格は95,000ドルの水準を割り込んだが、市場では90,000ドルを試す展開も視野に入っている。これは、過去の相場サイクルにおいても見られた現象であり、一度大きな調整が入ると、回復には時間がかかる傾向がある。

また、清算の連鎖はアルトコイン市場にも影響を及ぼしている。特にイーサリアム(ETH)やXRPは、ビットコインの下落とともに売りが加速しており、トレーダーのリスク回避姿勢が顕著となっている。過去のデータを見ると、大規模な清算が発生した後は、市場のボラティリティが一時的に高まりやすいが、その後の買い支えがなければ下落が続くケースが多い。

今後の市場の行方は、ビットコインの出来高の回復や、主要経済指標の発表、さらにはFRBの金融政策に左右されることになる。特に、暗号市場の大口投資家(いわゆる「クジラ」)の動向が重要視されており、現在の水準での買い支えが見られなければ、さらなる下落が続く可能性もある。

Source:CoinGape