ドナルド・トランプ政権は、仮想通貨に関する正式な評議会の設立を見送り、業界リーダーとの非公式サミットを重ねる形に移行する可能性がある。報道によれば、これらのサミットでは銀行や決済、データセンター、ビットコインマイニングといった具体的な政策課題が議論される見込みだ。
業界内では、仮想通貨規制の方向性やビジネスモデルの違いによる対立が続いており、政権側は非公式な場を通じて対話を円滑に進めようとしているとみられる。しかし、関係者の間では、この形式が実効性のある政策立案につながるかどうかについて賛否が分かれている。
仮想通貨評議会は当初、トランプ氏が大統領選期間中に提唱した構想であり、業界の規制枠組みを策定する重要な組織となるはずだった。評議会に関与すると目されていた企業には、Coinbase、a16z、Rippleなどの大手プレイヤーが含まれていたが、政権の方針転換により、その未来は不透明なものとなっている。
仮想通貨評議会の設立撤回 トランプ政権の狙いとは

トランプ政権は、仮想通貨業界の規制を検討するための正式な評議会の設立を撤回し、より非公式なサミット形式で業界関係者と対話を進める方針を取る可能性がある。政権内部の情報筋によると、トランプ氏は規制の枠組みを政府主導で固めるのではなく、業界のリーダーたちと直接議論する形を好んでいるという。
この決定は、仮想通貨業界内の意見対立を緩和し、政策の方向性を探るための柔軟なアプローチと見られている。特に、中央集権型プロジェクトと分散型プロジェクトの対立や、ビットコイン支持者とアルトコイン推進派の溝を埋める狙いがあるとされる。また、業界関係者からのフィードバックを直接受けることで、規制のバランスを保つことを目的としている。
一方で、仮想通貨業界の関係者の中には、正式な評議会がなければ明確な規制指針が打ち出されず、不透明な状況が続くのではないかという懸念の声もある。特に、CoinbaseやRippleなど、すでに評議会のメンバーシップを求めていた企業にとっては、今後の政策決定プロセスが見えにくくなる可能性がある。非公式サミットが単なる意見交換の場にとどまり、実質的な規制改革につながらない場合、業界全体の発展に悪影響を与える可能性も指摘されている。
非公式サミットの利点と課題 規制の方向性はどうなるのか
非公式サミット形式の最大の利点は、特定の政策課題ごとに柔軟な議論を行える点にある。銀行、決済、ビットコインマイニング、データセンターなど、それぞれの分野に関係する企業や専門家が個別に意見を述べる機会が増えることで、より具体的で実効性のある政策が形成される可能性がある。トランプ政権はこの形式を通じて、業界の細分化したニーズを把握し、規制の方向性をより適切に調整しようとしているとみられる。
しかし、課題も多い。サミットが非公式の場である以上、意思決定プロセスが不透明になりやすく、政策の一貫性を保つのが難しくなる可能性がある。また、個々の業界団体や企業が影響力を強めることで、一部のプレイヤーに有利な規制が形成される懸念もある。たとえば、ビットコインマイニングに関する規制を議論する際に、既存の大手マイニング企業が優遇され、新規参入者には厳しい規制が設けられる可能性もある。
さらに、トランプ政権の意図が単なる業界リーダーとの関係構築にとどまる場合、仮想通貨の規制が実質的に形骸化し、政策の整備が遅れるリスクもある。特に、米国証券取引委員会(SEC)や金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)といった規制当局との協調が不十分になれば、サミットの成果が実際の規制には反映されにくくなる可能性が高い。こうした背景を踏まえると、非公式サミットの導入が仮想通貨業界の発展にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向が注目される。
トランプ氏の仮想通貨戦略 業界との距離感はどう変化するのか
トランプ氏は大統領選期間中、仮想通貨業界に対して友好的な姿勢を見せており、特にビットコインを支持する発言が目立っていた。しかし、今回の非公式サミットの導入は、規制の方向性を曖昧にしながらも業界との関係を維持する戦略の一環と考えられる。
トランプ氏は最近、自身のミームコインを発行する動きを見せたり、家族がDeFiプロジェクト「World Liberty Financial」に関与したりするなど、個人的にも仮想通貨業界との関係を深めている。このような状況から、一部の業界関係者は、トランプ氏が仮想通貨規制を個人的な利益追求の手段として利用しているのではないかと疑問視している。
一方で、トランプ政権が仮想通貨業界と積極的に対話を続けることで、米国の仮想通貨政策がより市場寄りのアプローチを取る可能性もある。業界の意見を反映させやすい非公式サミットが定期的に開催されることで、規制が厳しくなりすぎるリスクを抑えることができるかもしれない。しかし、その一方で、政府主導の明確なルール作りが進まない場合、規制の枠組みが曖昧になり、業界の混乱を招く可能性も否定できない。
今後、トランプ政権がどのような形で仮想通貨政策を進めていくのか、そして非公式サミットが実際の規制策定にどの程度影響を与えるのかが焦点となる。現時点では、正式な政策決定の枠組みが確立されておらず、業界関係者の間でも意見が分かれている状況だ。仮想通貨市場の今後の方向性を占う上で、トランプ政権の次の一手に注目が集まっている。
Source:CryptoSlate