ノースカロライナ州議会は、州財務官がビットコインを含むデジタル資産に最大10%投資できるようにする法案「下院法案92(House Bill 92)」を提出した。対象となるのは、過去12か月の時価総額が7500億ドルを超える暗号資産で、現時点ではビットコインのみが該当する。投資は規制された上場投資商品(ETP)を通じて行われることが義務付けられている。

この動きにより、ビットコイン準備金の確立を目指す米国の州は20州に拡大。モンタナ州やフロリダ州も同様の法案を提出しており、特にフロリダ州ではビットコインをインフレ対策の手段と位置づけている。他にもメリーランド州、アイオワ州、ケンタッキー州が同様の法案を検討しており、各州がデジタル資産を財政戦略に組み込む流れが加速している。

米国各州が相次いでビットコイン準備金導入を進める背景

ノースカロライナ州が新たにビットコイン準備金導入の法案を提出したことで、全米におけるこの動きがさらに加速している。すでに20州が同様の法案を検討または導入しており、今後もこの流れは広がる可能性がある。背景には、政府や機関投資家による暗号資産の受容拡大、インフレ対策、財政の多様化という3つの要因がある。

第一に、暗号資産市場における制度的な進展が挙げられる。米国証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物ETFを承認したことは、州政府にとってもビットコインをより安全な資産として受け入れる土壌を作った。かつての規制リスクが和らぎ、州政府レベルでもデジタル資産を戦略的に活用する動きが活発になった。

次に、インフレリスクの高まりがある。米国では金融政策の影響でインフレ率が高止まりしており、法定通貨の購買力低下が懸念されている。ビットコインはその発行量が2100万枚に制限されているため、希少性が担保されており、インフレヘッジ資産としての側面が強調されている。フロリダ州の法案にも、ビットコインをインフレ対策として活用する意図が明記されている。

さらに、財政の多様化を図る狙いもある。従来の州財政は米国債や不動産、貴金属などに依存していたが、新たな資産クラスとしてビットコインを加えることで、リスク分散とリターンの向上を目指している。ノースカロライナ州の法案では、ビットコイン投資は厳格な管理のもとで行われ、運用を担当する企業にも一定の基準が求められている。これは、単なる投機ではなく、安定した資産運用の一環として検討されていることを示している。


法案が示す暗号資産の未来と米国経済への影響

ノースカロライナ州の法案が可決された場合、米国経済全体に与える影響は小さくない。暗号資産が国家レベルの財政戦略に組み込まれることで、デジタル資産市場の地位向上や市場の成熟が加速すると考えられる。一方で、規制のあり方や資産管理の方法については慎重な議論が求められる。

まず、法案の通過によって、ビットコインの制度的な信用が高まることが予想される。過去にはボラティリティの高さや規制の不透明性が問題視されてきたが、州政府が正式に資産として認め、管理の枠組みを整えることで、より多くの州や機関が追随する可能性がある。ノースカロライナ州に続き、ケンタッキー州やアイオワ州でもビットコインを財政資産として活用する動きが進んでいるのは、その兆候といえる。

一方で、州政府の資金を暗号資産に配分することにはリスクも伴う。特に、ビットコイン価格の変動が激しいことは依然として懸念材料である。ビットコインETFを通じた運用でリスクを軽減する仕組みはあるものの、従来の安全資産と比べれば、依然として価格の変動幅は大きい。そのため、長期的な視点での投資戦略が不可欠となる。

また、今後の動向として、米連邦政府の対応が注目される。現在のところ、各州が独自にビットコインの財政活用を進めているが、今後、連邦レベルでの法整備が進めば、より統一されたルールのもとでの運用が可能になる。その場合、ビットコインの国家的な財政資産としての位置づけが強まる可能性もある。


州政府のビットコイン投資が意味する新たな金融秩序

ビットコインを準備資産とする州が増える中で、米国の金融秩序そのものが変化しつつある。従来、州政府の財政資産は米ドル建ての金融商品や不動産、貴金属に限られていたが、ビットコインの導入によってデジタル資産が公的財政の一部として認識される時代に入ったといえる。

この動きが加速すれば、伝統的な金融システムにも影響を与える可能性がある。特に、米ドルの支配的な地位が揺らぐかどうかが注目されるポイントだ。ビットコインは中央銀行の管理を受けずに価値を持つため、法定通貨とは異なる特性を持つ。これまで国家レベルの準備資産として金(ゴールド)が活用されてきたが、ビットコインがその一角に食い込むことで、国際的な金融バランスが変化する可能性もある。

また、州政府がビットコインを保有することで、金融機関の暗号資産戦略にも影響を及ぼすと考えられる。現在、多くの銀行や投資機関は慎重な姿勢を崩していないが、政府レベルでの採用が進めば、金融機関もポートフォリオに暗号資産を組み込む流れが加速するかもしれない。

今後の鍵を握るのは、州政府の投資規模と連邦政府の規制方針である。現時点では、各州が独自にビットコイン準備金の導入を進めているが、連邦レベルで規制が強化される可能性も否定できない。特に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入を巡る議論が活発化している中で、州政府のビットコイン投資がどのような影響をもたらすのか、引き続き注視する必要がある。

ビットコイン準備金の導入は、単なる投資の話にとどまらず、米国の金融システム全体に影響を与える可能性を秘めている。州政府がどのようにビットコインを活用し、それが経済や金融政策にどのような影響を与えるのか、今後の展開が注目される。

Source:CryptoSlate