ビットコイン採掘企業MARAが、テキサス州ハンスフォード郡の風力発電所を買収し、240メガワットの送電接続容量と114メガワットの稼働中の風力発電を採掘事業に組み込んだ。この買収は、未活用の再生可能エネルギー資源を経済的価値に転換するMARAの戦略に基づくものであり、同社の「先進的ASIC退役計画」と連動して、旧型の採掘機器を効率的に活用する狙いもある。
MARAのCEOフレッド・ティール氏は、この再生可能エネルギー資産の取得が、ビットコイン採掘における運用コストを削減し、ネットゼロに近いコスト達成を可能にすると強調。同社CFOのサルマン・カーン氏も、資本利益率の向上と株主利益の最大化に寄与すると述べた。
MARAは1月に750BTCを採掘し、保有量を45,659BTCに拡大。現在の保有総額は43億ドル超で、公開企業では2番目の規模となっている。ただし、同社株価は市場の下落を受け、過去1か月で17.5%下落している。
テキサス風力発電所買収がMARAの採掘戦略を一新

MARAが買収したテキサス州ハンスフォード郡の風力発電所は、240メガワットの送電接続容量と114メガワットの稼働中の風力発電設備を備えており、これは同社の採掘事業における電力コスト削減に直結する。これまでMARAは第三者から電力を購入して採掘を行っていたが、発電施設を自社保有することで電力価格の変動リスクを軽減し、安定した採掘運用が可能になる。
この買収は2023年12月に初めて発表され、MARAが掲げる「未活用の持続可能な資源を経済的価値に転換する」という戦略の一環である。特に、同社が推進する「Advanced ASIC Retirement Initiative(先進的ASIC退役計画)」と密接に関連しており、通常のライフサイクルを超えた採掘ハードウェアの収益性を維持するためのインフラとしても機能する。
風力発電所の運用は、電力コストの削減だけでなく、採掘事業全体の環境負荷を低減する効果も見込まれる。ビットコイン採掘業界における環境負荷への批判が強まる中、MARAはこの買収によって、持続可能な採掘企業としてのブランド強化を図る狙いもあるだろう。
再生可能エネルギー活用がASIC採掘機器の寿命を延ばす鍵に
MARAは「Advanced ASIC Retirement Initiative」の下、通常であれば廃棄や二次市場への売却対象となる旧型のASIC採掘機器を、低コストの電力環境で稼働させることで寿命を延ばす方針を打ち出している。テキサス風力発電所の取得により、この取り組みはさらに加速することが予想される。
再生可能エネルギーを活用することで、採掘コストが大幅に抑制される。電力価格が低下すれば、古い採掘機器でも収益性を保ちながら運用を継続できるため、設備投資における減価償却期間を超えて利益を生み出すことが可能になる。このアプローチは、採掘機器の更新サイクルを長期化し、設備費用の負担を軽減する効果も期待される。
また、再生可能エネルギーを活用した採掘は、ネットワーク全体の安定性向上にも寄与する。風力発電所が需要に応じた柔軟な電力供給を行うことで、電力網の需給バランスを整える役割を果たすことができる。MARAは、このような環境と経済の両面における利点を最大化することで、事業の持続可能性を強化している。
株主価値向上と市場での競争力確保を目指すMARAの展望
MARAのCFO、サルマン・カーン氏は今回の買収について「資本利益率を向上させ、運用コストを削減し、株主の希薄化を軽減する」と明言している。この発言は、同社が短期的な採掘利益だけでなく、株主価値の長期的な最大化を視野に入れていることを示唆している。
自社発電施設の保有により、電力購入費用の削減はもちろん、エネルギー価格の変動に左右されない安定した財務基盤が構築される。特にビットコイン価格の変動が激しい状況下では、運用コストの抑制が採掘企業の競争力を左右する要素となる。MARAは、電力コストを固定化することで、利益率を安定させる戦略を取ったと考えられる。
さらに、再生可能エネルギーを活用することで、環境意識の高い投資家や機関投資家からの評価も高まり、資本調達の面でも有利に働く可能性がある。ビットコイン市場が短期的な価格下落に直面している中でも、MARAは持続可能な成長基盤を築き、競争優位性を確保する姿勢を明確にしている。
Source:Decrypt