暗号資産取引所BybitのCEO、ベン・ゾウ氏がPi Networkを「詐欺」と断言し、同プラットフォームへのPIトークン上場を拒否したことが波紋を呼んでいる。ゾウ氏は、Pi Networkが高齢者を標的にした詐欺的な活動に関与している可能性を示唆し、中国当局からの警告を根拠に挙げた。この発言を受け、PIトークンは1日で55%以上急落し、投資家の間で不安が広がっている。
一方で、バイナンスはPIトークンの上場に関するコミュニティ投票を実施しており、賛成票が多数を占める状況だ。しかし、価格の急落と取引量の急増が同時に発生していることから、市場の不安定さは今後も続く可能性がある。専門家の間では、主要取引所への上場が実現すれば価格が回復し、さらなる高騰の可能性も指摘されている。
Bybitの上場拒否に至った背景と根拠

Bybitのベン・ゾウCEOがPi Networkを「詐欺」と断言し、PIトークンの上場を拒否した背景には、中国当局からの警告とプロジェクトの透明性に対する疑念がある。ゾウ氏は、中国の衡陽市人民政府が2021年に発表した警告を引用し、Pi Networkが高齢者を対象とした詐欺的な活動に関与している可能性を指摘した。この警告では、同プロジェクトが個人情報を不正に収集し、年金基金を集める手法を採用しているとの懸念が示されている。
加えて、ゾウ氏はX(旧Twitter)の投稿で「Bybitは詐欺を上場しない」と明言し、同社が一貫して信頼性を重視する姿勢を強調した。過去に外国為替取引で中年層が損失を被り、資金回収を訴える状況を目の当たりにした経験から、同様の事態を暗号資産市場で繰り返すことは避けたいという個人的な見解も示している。
この立場は、暗号資産市場における信頼構築と取引所の責任を強調するものであり、Bybitがリスクを回避し、安全性を最優先に考える姿勢を明確に示していることを物語っている。
PIトークン急落の背景と市場反応
PIトークンは、Bybitの上場拒否発言後、24時間以内に55%以上急落し、最高値の1.99ドルから0.78ドルまで下落した。この急落は、市場の信頼性低下と売り圧力の高まりによるものと考えられる。しかし、興味深いことに、同時期に取引量は2833%もの急増を記録しており、価格下落にもかかわらず活発な売買が行われたことを示している。
市場参加者の反応は二極化しており、リスクを懸念して撤退を図る者と、短期的な価格変動を利益獲得の機会と捉える者が存在する。一部のアナリストは、主要取引所への上場が実現すれば再び価格が上昇する可能性があると指摘し、300ドルまでの急騰を予測する見方もあるが、これは現状の不確実性を考慮すると過度に楽観的と捉えられるかもしれない。
一方、BinanceではPiトークンの上場に関するコミュニティ投票が進行中であり、現時点では賛成票が多数を占めている。この結果が最終的な上場決定にどの程度影響を与えるかは不透明であるものの、市場の関心が依然として高いことは確かだ。
今後の展開と暗号資産市場への影響
Bybitの決定は単なる一企業の判断にとどまらず、暗号資産市場全体に対する警鐘とも言える。特に、透明性や信頼性に欠けるプロジェクトに対して、取引所が厳格なスタンスを取ることが市場健全化に寄与すると考えられる。
Pi Network側は、これまで公式な反論や透明性を示す措置を講じておらず、疑念を払拭するための具体的な行動が求められている。プロジェクトが今後も市場で支持を得るためには、信頼性を担保する情報開示と第三者機関による監査などが不可欠となるだろう。
暗号資産市場は成長を続ける一方で、信頼性を欠いたプロジェクトが投資家に損失をもたらすリスクも存在する。Bybitの決断は、このようなリスクを回避し、市場の安定を図る重要な一歩と捉えられる。今後の展開次第では、他の取引所や市場参加者にも影響を与え、暗号資産取引における信頼性基準の再定義が進む可能性がある。
Source:CoinGape