米国政府が仮想通貨の戦略的準備金の創設を検討する中、リップル社が自社の仮想通貨XRPを含めるよう積極的に働きかけていると報じられている。これに対し、ビットコイン支持者からは、リップルがビットコイン単独の準備金構想を妨害しているとの批判が上がっている。リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOは、政府の準備金は特定のトークンに限定すべきではないと主張し、仮想通貨業界全体を代表するべきだと述べている。

一方、ビットコイン支持者は、リップルの動きがビットコインの地位を脅かす可能性があると懸念を示している。この対立は、仮想通貨業界内の競争と戦略的準備金の在り方に関する議論を活発化させている。

リップルの政治戦略と仮想通貨業界への影響

リップルは、仮想通貨業界における政治的影響力を強め、政府の戦略的デジタル資産準備金構想に介入する動きを見せている。特に、2025年1月にドナルド・トランプ政権が発表した大統領令から「ビットコイン」の言葉が削除された背景には、リップルの政治的働きかけがあったのではないかという疑惑が浮上している。

リップルは、2024年の米国選挙期間中、仮想通貨関連の政策を後押しするために3億ドル規模のスーパーPAC(政治活動委員会)に資金を提供し、トランプ陣営にも500万ドルの寄付を行った。こうした積極的な政治活動を通じて、リップルは自社の仮想通貨XRPの規制上の地位を確立しようとしているとみられる。

一方で、ビットコイン支持者たちは、リップルの影響力が「戦略的ビットコイン準備金(SBR)」の創設を妨害していると非難している。ZapのCEOジャック・マラーズ氏は、リップルが「数百万ドルを費やし、ビットコインではなくXRPを含むデジタル資産準備金を政府に推進させようとしている」と指摘した。ビットコインの分散性と政府からの独立性を重視する立場からすれば、リップルの戦略は中央集権的な動きと映る。

この対立は単なる市場競争ではなく、仮想通貨の未来に関わる重大な政治的争点へと発展している。今後、政府がどのような決断を下すのかが、仮想通貨業界全体の方向性を左右するだろう。

ビットコイン支持派の懸念とXRPの立場

ビットコイン支持者がリップルに強く反発する背景には、両者の根本的な設計思想の違いがある。ビットコインは分散型ネットワークによって管理され、特定の企業や政府の影響を受けにくい。一方で、XRPの大部分はリップル社によって管理されており、中央集権的な性質を持つ。

この違いは、規制や政府の関与に対するスタンスにも影響を与えている。ビットコイン支持者は、政府がビットコインを戦略的準備資産として保有することは、ビットコインの採用を促進し、その価値を高めると考えている。これに対し、リップルはXRPを含むデジタル資産全般を政府の準備金として認めさせることで、XRPの需要を拡大しようとしている。

リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOは、「仮想通貨準備金は特定のトークンに限定されるべきではなく、業界全体を代表するべきだ」と主張する。一方で、ビットコイン支持者の中には、「リップルの政治的影響力が仮想通貨業界に歪みを生じさせている」と警戒する声もある。

仮想通貨業界は、ビットコイン支持派とリップル支持派の間で分裂しつつある。政府がどのような方針を打ち出すかによって、今後の市場の動向が大きく変わる可能性がある。

仮想通貨戦略的準備金の今後の展望

政府の仮想通貨準備金構想は、依然として議論の渦中にある。現時点では、米国政府がどの仮想通貨を準備金に採用するかは明確になっていないが、業界内の対立が続く限り、一貫した政策決定は難しくなる可能性がある。

シンシア・ルミス上院議員は、「仮想通貨業界が一致団結しなければ、政府の支援を得ることは難しい」と警告する。業界全体が政府に対し統一した提言を行うことができなければ、結果的に仮想通貨準備金の創設自体が棚上げされる恐れがある。

また、ビットコイン支持者とリップルの対立が長引けば、政府は特定の仮想通貨に依存しない形でのデジタル資産準備金の構築を進める可能性がある。これにより、ビットコインもXRPも準備金としての採用が見送られる可能性があり、業界内での対話が求められている。

今後の展開次第では、リップルがXRPの立場を強化することに成功するか、あるいはビットコインが政府の支持を取り戻すのか、重要な分岐点に差し掛かっている。

Source:Decrypt