ノーベル経済学賞を受賞したユージン・ファーマ氏は、1月30日のポッドキャスト「Capitalisn’t」で、ビットコインが交換手段としての基本的なルールに反していると指摘した。彼は、ビットコインの価値が極めて変動的であり、安定した実質価値を持たないことから、10年以内にその価値がゼロになる可能性が高いと述べた。また、仮想通貨全般が通貨として機能しない理由として、人々が実際に使用せず、安定した価値を持たない点を挙げた。

一方で、米ドルのような安定した実質価値を持つ通貨をブロックチェーン上で使用することには可能性があると認めている。さらに、ビットコインは「51%攻撃」のリスクにもさらされており、政府の仮想通貨市場への関与がビットコインの価値低下を加速させる可能性があると警告した。ファーマ氏のこれらの見解は、仮想通貨の将来性を考える上で重要な視点を提供している。

ビットコインの本質的な問題と交換手段としての限界

ビットコインは、その誕生以来「デジタルゴールド」として注目を集めてきたが、ノーベル経済学賞受賞者ユージン・ファーマ氏は、通貨としての本質的な問題点を指摘している。彼が強調したのは、ビットコインが「安定した実質価値を持たない」という点だ。通貨としての機能を果たすためには、価値の保存性や流動性が不可欠である。しかし、ビットコインの価格は短期間で大きく変動し、日常的な取引に使用するには適していないという指摘がある。

また、従来の貨幣制度では、政府や中央銀行が供給量を調整し、通貨の安定を保っている。しかし、ビットコインは発行上限が固定されているため、経済の変動に対して柔軟に対応することができない。この特性が投機的な動きを助長し、結果として価格の乱高下を引き起こしているという見解もある。実際に、過去数年間でビットコインは短期間で数倍に値上がりしたかと思えば、一気に半減するような動きを繰り返してきた。

こうした特徴は、日常的な決済手段としてのビットコインの普及を阻害する要因となっている。例えば、商品を購入する際、決済のタイミングでビットコインの価値が大きく変動すれば、売り手も買い手も不安定な取引を強いられる。安定した価値を持たない通貨は、信頼性に欠けるため、人々が安心して使用できる環境が整わない。ファーマ氏の指摘は、この根本的な問題に基づいていると考えられる。

ビットコインと金の決定的な違いとは何か

ファーマ氏は、ビットコインと金を比較し、金が持つ実用性を強調している。金は、装飾品や工業用途として広く利用されており、その需要が価格を支えている。一方で、ビットコインはブロックチェーン技術を基盤とするデジタル資産であり、実体を持たない。投資家はビットコインを資産として保有するが、それ自体に利用価値があるわけではない。

金が歴史的に価値を保ち続けてきた理由の一つは、その物理的な存在と限定された供給量にある。さらに、各国の中央銀行が外貨準備として保有するなど、国家レベルでの需要も安定している。しかし、ビットコインは国家の保証を受けることがなく、供給量の上限が決められているものの、投機的な動きによって市場価格が大きく変動する。この点が、金との決定的な違いとなる。

また、政府の規制や政策が金とビットコインに与える影響も異なる。例えば、金の市場は規制の下で長年にわたり安定しているが、ビットコインは各国の規制によって価格が急変するリスクを抱えている。特に、各国政府が仮想通貨に対して厳しい規制を強化すれば、ビットコインの価値が大幅に下落する可能性があると指摘されている。

これらの違いを考慮すると、ビットコインが「デジタルゴールド」として金と同等の価値を持ち続けるかどうかは不透明だ。ファーマ氏の見解に従えば、実体的な価値を持たない資産が長期的に維持される可能性は低く、ビットコインが無価値になる未来を想定するのも決して非現実的ではない。

ステーブルコインと法定通貨の融合が示す未来

ファーマ氏は、ビットコインの価値が安定しないことを批判する一方で、米ドルのような法定通貨をブロックチェーン上で運用する可能性については一定の評価をしている。これは、ステーブルコインの発展と関連する議論だ。ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させることで、価格変動を抑えつつブロックチェーン技術の利便性を活用する試みである。

現在、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)といったステーブルコインが市場で広く流通しており、一部の決済や送金手段としても利用されている。しかし、これらのステーブルコインは発行主体が中央集権的であるため、完全な分散型金融(DeFi)とは異なる性質を持つ。ファーマ氏の発言からは、「価値の安定性」を重視するならば、既存の法定通貨をデジタル化することが現実的な解決策であるという示唆が読み取れる。

ただし、ステーブルコインも完全にリスクがないわけではない。特に、発行主体が裏付け資産をどの程度確保しているかが不透明な場合、価格の信頼性が揺らぐ可能性がある。また、各国の規制当局がステーブルコインに対する厳格なルールを設けることで、市場の成長が抑制される懸念もある。

このように、仮想通貨市場は多くの不確実性を抱えながらも、新たな技術革新が進んでいる。ファーマ氏の見解は、ビットコインの未来を悲観的に捉えているが、同時にブロックチェーン技術の活用方法によっては新たな可能性が開けることを示唆していると言えるだろう。

Source:crypto.news