Solanaブロックチェーン上で運営されていた分散型ライドシェアサービス「Teleport」は、事業継続の困難さを理由に、1月30日にサービス終了を発表した。同社は公式サイトで、ユーザーに対し2月28日までに残高のステーブルコインやプライベートキーの引き出しを求めている。2022年に元Dropboxエンジニアのポール・ボーム氏が立ち上げたTeleportは、仲介業者を排除し、ドライバーの収益向上とライダーのコスト削減を目指していた。
しかし、900万ドルの資金調達にもかかわらず、競争の激しいライドシェア市場で十分なユーザーベースを確保できず、事業継続が困難となった。同社は将来的に今回の決定に至った詳細な経緯を説明する意向を示しているが、現時点では円滑な事業終了に注力している。
Teleportの事業モデルとブロックチェーン技術の活用
Teleportは、従来のライドシェアサービスとは異なり、ブロックチェーン技術を活用した分散型プラットフォームとして設計されていた。UberやLyftといった既存企業が中央集権的な管理を行うのに対し、TeleportはSolanaブロックチェーンを基盤とすることで、ドライバーと乗客の直接的なやり取りを可能にし、中間手数料の削減を目指していた。
同社の「Rideshare Protocol」は、スマートコントラクトを活用し、乗客とドライバーの取引を自動化する仕組みを導入していた。これにより、従来のライドシェア企業が徴収する手数料を最小限に抑え、ドライバーにはより多くの収益を、乗客には低コストの移動手段を提供することが可能だった。さらに、プラットフォーム内の決済はステーブルコインで行われ、法定通貨への依存を減らしながら即時決済を実現していた。
また、Teleportは「パーミッションレス・マーケティング」という手法を採用し、ユーザー自身がネットワークを拡大する役割を果たす仕組みを採用していた。従来のライドシェア企業のように広告やプロモーションを大規模に行うのではなく、参加者が新たなドライバーやライダーを勧誘し、ネットワークを構築することで成長を目指していた。この仕組みは、ブロックチェーンの透明性と相まって、中央集権的なプラットフォームでは実現が難しい新たなビジネスモデルとして注目されていた。
しかし、このアプローチは一定の成果を上げたものの、結果的に十分なユーザーベースの獲得には至らなかった。ライドシェア市場の競争が激化する中で、Teleportの分散型の仕組みが利便性や価格競争力の面で優位に立つことは難しく、サービスの継続が困難になったと考えられる。
競争が激化するライドシェア市場とTeleportの課題
ライドシェア市場はUberやLyftといった既存の大手企業によって寡占状態にあり、新規参入企業が持続可能なビジネスを構築することは極めて困難な状況にある。これらの企業は長年の市場支配によって大量のユーザーデータを蓄積し、アルゴリズムによる効率的な配車を実現している。また、規制への対応能力や資金力の面でも優位性を持ち、新規参入者はそれを超える付加価値を提供しなければ生き残ることができない。
Teleportは、ブロックチェーンを活用した分散型の運営モデルを武器に、この市場での差別化を図ったが、従来の利便性や規模の経済を覆すまでには至らなかった。特に、ブロックチェーン上での決済やスマートコントラクトの活用は透明性の向上には寄与するものの、一般ユーザーにとっては既存の決済手段と比べて必ずしも利便性が高いとは限らない。さらに、ブロックチェーンのトランザクション手数料(ガス代)やネットワークの混雑時の遅延といった課題も影響を与えた可能性がある。
また、新興ライドシェア企業が成功するためには、供給側(ドライバー)と需要側(ライダー)の双方が一定の規模に達しなければならないが、この二面市場の成長には時間と多額の資金が必要となる。Teleportは900万ドルの資金調達を行ったものの、既存の大手企業と競争するには十分とは言えず、マーケティングやインセンティブの提供において十分なリソースを確保できなかったことが、成長の障壁となったと考えられる。
分散型ライドシェアの未来とTeleportの影響
Teleportの撤退は、分散型ライドシェアサービスにとって大きな試練となるが、同様の取り組みが今後完全に消滅するとは限らない。ブロックチェーン技術は依然として、従来の中央集権的なプラットフォームに対する代替手段として注目されており、特に「Decentralized Physical Infrastructure Networks(DePIN)」の概念は今後も成長が期待される分野である。
DePINとは、物理的なインフラをブロックチェーン上で管理し、分散型ネットワークの参加者によって運営される仕組みを指す。Teleportはこの概念をライドシェア市場に適用したが、実際の運営では十分な流動性やネットワーク効果を生み出すことができなかった。しかし、他のDePINプロジェクトでは、分散型データストレージやIoTネットワークなど、より適した領域で成功を収めている例もあり、ライドシェアにおいても異なるアプローチが模索される可能性はある。
また、Teleportが導入した「Compressed NFTs」などのブロックチェーン技術を活用したインセンティブ設計は、新たな形態のユーザーエンゲージメントの可能性を示した。今後、分散型ライドシェアが復活するためには、ブロックチェーン技術を活用しながらも、従来のライドシェア企業と同等の利便性や価格競争力を備えたモデルが求められるだろう。
Teleportの事例は、単なる撤退としてではなく、ブロックチェーン技術の活用方法を見直す機会として捉えるべきである。今後、DePIN領域の進化とともに、分散型プラットフォームの新たな可能性が模索されることで、ライドシェア市場にも新たな波が訪れるかもしれない。
Source:Cryptopolitan