米国のビジネスインテリジェンス企業、マイクロストラテジーは、11月11日から続けていたビットコインの連続購入を先週終了した。同社のエグゼクティブ・チェアマンであるマイケル・セイラー氏は、X(旧Twitter)上で、1月27日から2月2日の間に新たなビットコインの購入やクラスA普通株式の売却を行わなかったと報告した。
これにより、同社のビットコイン保有総数は47万1107BTCとなり、総投資額は約304億ドルに達している。この購入停止の背景には、2月5日に予定されている決算発表前のブラックアウト期間が影響している可能性があると専門家は指摘している。
マイクロストラテジーのビットコイン戦略とその変遷
マイクロストラテジーはもともとデータ分析ソフトウェアを主力事業とする企業であったが、現在ではビットコインを保有することで市場の注目を集める存在となっている。同社のエグゼクティブ・チェアマンであるマイケル・セイラー氏は、ビットコインを「デジタルゴールド」と位置付け、積極的な買い増し戦略を展開してきた。
この戦略の転換点となったのは、2020年のパンデミック時の金融政策だ。当時、米連邦準備制度(FRB)は金利を大幅に引き下げ、大規模な金融緩和策を実施した。これにより、インフレ懸念が高まり、企業のキャッシュフロー管理が重要視されるようになった。マイクロストラテジーはこの状況を受け、資本を現金からビットコインへとシフトする決定を下した。
この戦略が功を奏し、同社の株価は急上昇を記録した。初回のビットコイン購入を発表した際、株価は14.44ドルだったが、現在では332ドルに達している。これは単なる投機的な動きではなく、同社がデジタル資産を長期的な価値保存手段として位置付けていることを示している。
ビットコイン購入停止の背景と市場への影響
今回のビットコイン購入の一時停止は、同社が継続的に行ってきた大規模な買い増しの流れを断ち切るものとなる。直近の12週間で200億ドル以上を投じていたが、その動きが止まったことで、市場は一時的な調整局面を迎える可能性がある。
また、この停止の背景には、マイクロストラテジーが企業としての財務管理を強化しようとする意図があると考えられる。同社は「21/21プラン」のもとで、総額420億ドルの資金調達を進めており、そのうち210億ドルを株式発行で、残りを債券発行で賄う予定だ。これにより、財務戦略の再調整が求められている可能性がある。
市場の反応として、ビットコインの価格には一定の影響が及ぶ可能性がある。特にマイクロストラテジーのような機関投資家による大口購入は市場価格を押し上げる要因となっていたため、今後の動向次第では調整局面が長引くことも考えられる。ただし、同社がビットコインの長期保有方針を維持していることから、短期的な売却リスクは限定的とみられる。
今後の展望と企業の動向
マイクロストラテジーの動向は、デジタル資産市場にとって依然として重要な指標となる。過去においても、同社がビットコイン購入を発表するたびに市場が反応し、価格が変動する傾向が見られた。今回の購入停止が一時的な措置なのか、それとも財務戦略の大幅な見直しを意味するのかによって、今後の市場の方向性が左右される可能性がある。
また、同社はすでに10億5000万ドルの企業債務の管理を進めており、財務状況を安定させることに注力している。これにより、新たなビットコイン購入のタイミングを慎重に見極める戦略が採られるとみられる。
マイクロストラテジーの株価動向や、次回の決算発表の内容にも注目が集まる。特に、新たな株式発行や資金調達の進捗状況が、今後のビットコイン購入戦略にどのように影響するのかが重要なポイントとなる。デジタル資産市場において同社の存在感は依然として大きく、今後の意思決定が市場全体に波及する可能性は高い。
Source:Decrypt