イーサリアムネットワークのSkaleとAbstract上で開発中のトレーディングカードゲーム『What Is This Sorcery(WITS)』が、物理カード制作のための資金を集めるべく、Kickstarterキャンペーンを開始した。

このキャンペーンは単なる資金調達にとどまらず、Web2ゲーマーへのリーチを目的としている。キャンペーンは火曜日の午後にスタートし、目標金額は2万ドル(約300万円)で、ストレッチゴールとして8万ドル(約1200万円)を設定。開始直後から6,700ドル(約100万円)以上の支援が集まっている。

WITSの共同創設者兼CEOであるニック・グロッシ氏は、Kickstarterが広告やアドバイスの提供、カードゲーム支援者へのメールキャンペーンを通じてプロジェクトをサポートしていると述べている。グロッシ氏は、Kickstarterを通じてWeb3以外のプレイヤーにリーチし、投機目的ではなく実際にゲームをプレイしたいユーザーにアプローチできると強調している。

また、過剰なWeb3プレセールを避け、持続可能な市場環境を維持することも狙いの一つである。さらに、物理カードにはNFCチップが埋め込まれ、ゲーム内での特典やデジタル版の取得が可能となる予定だ。この戦略により、Web3ゲームが従来のゲーム市場に統合されるための青写真を提供するとしている。

Web3ゲームとクラウドファンディングの新たな関係性

『What Is This Sorcery(WITS)』がKickstarterで資金調達を実施する背景には、Web3ゲームにとって新たな市場を開拓する狙いがある。従来のWeb3ゲームは、NFT販売や独自トークンの発行を主な資金調達手段としてきたが、これは投機的な性質を帯びることが多く、プレイヤーの関心が短期的になりやすいという課題があった。WITSはこの問題を回避するために、クラウドファンディングを活用してWeb2ユーザーを積極的に巻き込もうとしている。

Kickstarterを通じた資金調達には、ゲーム自体の魅力を純粋に評価する支援者が多く集まるというメリットがある。トークン経済を前提としないユーザーが多いため、投機目的ではなく実際にプレイすることを目的とした支援が期待できる。加えて、Kickstarterはユーザーコミュニティとの対話の場としても機能し、支援者のフィードバックを取り入れながらプロジェクトを成長させることができる。

また、Kickstarterが公式にサポートする初のWeb3ゲームであることも注目すべき点である。クラウドファンディングの大手プラットフォームがWeb3プロジェクトに積極的な関心を示したことで、他の開発者が同様の手法を採用する可能性が高まる。この動きは、Web3ゲームの資金調達手法の多様化を促し、従来の暗号資産に依存したモデルからの脱却を進める契機となるだろう。


NFC搭載の物理カードがゲーム体験をどう変えるか

WITSがKickstarterで調達した資金を活用しようとしているのが、NFCチップを埋め込んだ物理カードの制作である。この技術を活用することで、デジタルとフィジカルを融合させた新たなゲーム体験を提供しようとしている。

NFC搭載のカードは、プレイヤーがスマートフォンなどのデバイスにかざすことで、ゲーム内の特典を取得できる仕組みを持つ。これにより、物理カードが単なるコレクターズアイテムにとどまらず、実際のプレイに影響を与える要素として機能する。たとえば、特定のカードをスキャンすると、ゲーム内での能力が強化されたり、限定キャラクターをアンロックできる可能性がある。

このアプローチは、従来のデジタルカードゲームにはない新たな付加価値を生み出す。オンラインとオフラインの境界を曖昧にし、リアルな収集要素を持ちながらも、デジタル環境での利便性を維持することができる。また、カードのNFTバージョンが存在することで、ユーザーは自身の所有するアイテムをデジタル資産として管理し、トレードや販売の可能性を持つことになる。

この手法は、従来のNFTゲームが直面してきた「デジタルアイテムの価値が可視化しにくい」という問題を解決する糸口にもなりうる。物理的なカードという形で実体を持つことで、プレイヤーはコレクションの価値を直感的に理解しやすくなり、従来のトレーディングカード市場とWeb3の技術が融合する新たな市場が形成される可能性がある。


Web3ゲームの未来とKickstarterモデルの可能性

WITSの試みは、Web3ゲームが従来のプレイヤー層とどのように融合できるかを示す重要な事例である。これまで、Web3ゲームの多くはトークン販売やNFTの取引を前提としたモデルを採用しており、必然的に暗号資産市場の変動に大きく左右される傾向があった。しかし、Kickstarterのような伝統的なクラウドファンディングを活用することで、新たなプレイヤー層にリーチし、より持続可能な経済圏を構築できる可能性がある。

また、Kickstarterモデルの成功は、他のWeb3プロジェクトにも影響を与えると考えられる。特に、ゲーム業界においては、NFTやブロックチェーン技術に対する懐疑的な声も根強い。これまでWeb3ゲームに関心を示さなかったユーザー層に対して、クラウドファンディングを通じたエントリーポイントを提供することで、Web3技術の受け入れが進む可能性がある。

今後の展開として、他のWeb3ゲームもクラウドファンディングを活用する流れが加速するかもしれない。KickstarterのようなプラットフォームがWeb3プロジェクトに対して積極的な支援を行えば、Web3ゲームの開発者にとって資金調達の選択肢が増え、投機目的ではなくプレイヤーの支持を得ることを重視する方向へとシフトすることが期待される。

WITSのプロジェクトは、Web3ゲーム業界にとって試金石となる可能性がある。クラウドファンディングの成功如何によっては、今後のWeb3ゲームの在り方を根本から変える一歩となるかもしれない。

Source:Decrypt