過去2日間でビットコインが10%以上下落し、市場に動揺が広がっている。この下落の背景には、米国のスポット型ビットコインETFからの大規模な資金流出があると指摘されている。K33 Researchのデータによると、ETF市場では過去最大の14,579BTCの流出が発生し、2月を通じて流出トレンドが続いている。
さらに、CMEのビットコイン先物市場ではプレミアムが大幅に縮小し、ETF市場との価格差が小さくなっている。QCP Capitalは、スタグフレーションへの懸念や米国の関税政策が市場全体のリスク回避を加速させた可能性を指摘。市場関係者は、今後のNVIDIA決算とPCEデータがビットコイン価格に与える影響を注視している。
ビットコインETFの資金流出が市場に与えた影響

ビットコインの急落は、米国のスポット型ビットコインETFからの大規模な資金流出と密接に関係している。K33 Researchによれば、ETF市場では14,579BTCの純流出が発生し、これは米国スポットETFの開始以来最大規模となった。さらに、2月に入ってから69%の取引日で純流出が確認されており、市場全体に売り圧力が継続している。
ETF市場からの資金流出は、ビットコインの流動性低下を招き、売り注文の影響が価格に反映されやすい状況を生んでいる。特に、機関投資家のETF売却は、大口の現物市場取引と連動しやすく、相場の急変動を引き起こしやすい。さらに、ETFの流出に伴い、CMEのビットコイン先物市場でも未決済建玉が減少し、市場の投機的ポジションが大幅に縮小している。
この状況に対し、Trading RiotのAdam氏は、過去のデータを基に「大規模な流出の後には市場が反発する傾向がある」と指摘している。しかし、市場の回復には時間がかかる可能性もあり、投資家心理の改善がカギとなる。特に、流出が今後も続くかどうかが重要なポイントとなる。
先物市場の変動が示す市場センチメント
先物市場の動向も、今回のビットコイン急落を理解する上で欠かせない要素だ。Split CapitalのZaheer Ebtikar氏によれば、CMEのビットコイン先物は、これまで現物市場に対し高いプレミアムで取引されていたが、最近の下落により5%未満に縮小した。プレミアムの縮小は、市場の強気姿勢が後退し、リスク回避の動きが強まっていることを示唆している。
さらに、CME先物市場の未決済建玉は過去最低水準に達しており、これはETFの売却と連動した投機的な資金の縮小を示している。Ebtikar氏は「先物のプレミアムが下がると、先物市場では買いが入りやすくなる一方で、ETF市場では売り圧力が高まるというパラドックスが生じる」と指摘している。これは、機関投資家がETFを通じた投資を避ける一方で、先物市場での取引を続けている可能性を示している。
また、CMEの先物取引量は過去最高水準に達しており、ボラティリティの上昇が市場の不安定さをさらに加速させている。市場参加者の間では、これが一時的な調整なのか、より長期的なトレンドの転換を示すのかについて見方が分かれている。
マクロ経済の影響と今後の注目点
今回のビットコイン急落は、単なる暗号資産市場の動きにとどまらず、マクロ経済要因とも密接に関連している。シンガポール拠点のQCP Capitalは「世界的なリスク回避の動きが強まっている」と指摘し、株式市場や金、ビットコインが同時に売られている状況を警戒している。特に、米国でスタグフレーションの懸念が高まり、金融市場全体に慎重なムードが漂っている。
消費者心理の悪化も見逃せない。最新の消費者信頼感指数(CCI)は予想の103を下回り98にとどまり、市場全体のセンチメントを冷やしている。加えて、米国政府が3月3日からカナダ・メキシコからの輸入品に対し25%の関税を課すことを決定したことも、経済の先行き不透明感を強める要因となっている。
今後の市場の方向性を占う上で、NVIDIAの決算発表とPCE(個人消費支出)価格指数の発表が注目される。AIブームを背景に高成長を続けるNVIDIAが期待外れの決算を発表すれば、リスク資産全体に悪影響を及ぼす可能性がある。また、PCEデータがFRBの目標である2%を上回れば、利下げ期待が後退し、さらに市場の売り圧力を高めることが考えられる。
QCP Capitalは「暗号資産市場は従来の金融市場と連動する傾向が強まっており、今後の経済指標が相場に与える影響は大きい」と指摘している。市場の不確実性が増す中で、投資家は慎重な姿勢を維持しながら動向を注視する必要がある。
Source:Bitcoinist