暗号資産イーサリアム(ETH)の価格が3,000ドルに迫る動きを見せている。背景には、スイス拠点の資産運用会社21Sharesが米国証券取引委員会(SEC)に対し、ETHを活用した上場投資信託(ETF)にステーキング機能を追加する提案を行ったことがある。この申請により、イーサリアムの流動性向上や収益増加への期待が高まり、価格上昇を後押しする要因となっている。
この提案は、Cboe BZX取引所を通じて19b-4申請として提出された。内容には、ETH ETP(上場取引型金融商品)の改正案として信託が保有するイーサリアムをステーキング可能にすることが含まれる。これが実現すれば、21Sharesは業界で初めてETFにステーキング機能を組み込む発行者となる可能性がある。
現在、イーサリアム市場は強気基調にあるものの、3,000ドルの水準が依然として大きな抵抗ラインとなっている。市場では今回の提案がSECに承認されるかどうかに注目が集まり、さらなる価格のブレイクアウトを期待する声もある。加えて、今後予定されているPectraアップグレードが価格上昇を支える要素となる可能性があり、ETHの長期的な成長に対する楽観的な見方が強まっている。
ETH ETFのステーキングがもたらす市場構造の変化

21SharesによるETH ETFのステーキング提案は、暗号資産市場の構造に大きな影響を与える可能性がある。これまで、ETHを保有するだけでは価格変動による利益しか得られなかったが、ETFの仕組みの中でステーキングが可能になれば、新たなリターンの選択肢が生まれる。従来の投資商品と比較して、ETHの収益モデルに変化が起こることは確実だ。
ETFにステーキング機能が追加されれば、従来のスポット市場と比べて保有者のインセンティブが変わる。これにより、長期保有を前提とする投資家が増える可能性があり、市場のボラティリティ(価格変動性)を抑制する要因となるかもしれない。一方で、ETFを通じたステーキングが活発になれば、取引所上で流通するETHの供給量が減少し、市場全体の流動性に影響を与えることも考えられる。
また、Cboe BZX取引所がSECに提出した19b-4申請の行方次第で、規制の枠組みが大きく変わる可能性がある。これまでSECは、暗号資産のステーキングに対して慎重な姿勢を示してきたが、ETF内でのステーキングが認められれば、他の発行体も追随し、金融市場におけるETHの立ち位置が変化することが予想される。これは、伝統的な金融市場と暗号資産市場の境界がますます曖昧になっていく兆候とも言える。
ETH価格の抵抗線3,000ドル突破のカギを握る要因
ETHの価格は現在、3,000ドルの抵抗ラインに挑んでいる。この価格帯は過去の取引データに基づいても強固なレジスタンス(抵抗線)となっており、短期間での突破には複数の要因が絡む。21Sharesの提案に加え、ステーキングによるETH供給の減少、機関投資家の資金流入、Pectraアップグレードへの期待などが価格を押し上げる要因となる。
まず、ステーキングの影響として、流通市場におけるETHの供給が縮小する可能性がある。市場に出回るETHの量が減少すれば、需要が一定以上ある限り、価格の上昇圧力がかかる。特に、21Sharesのような大手資産運用会社がステーキングを導入すれば、流通市場のETH供給量がより一層減少し、価格の安定と上昇につながるかもしれない。
また、ETH/BTC比率が過去最低水準に下落していることも、ETH価格に影響を与える要因だ。市場では、ETHがビットコインに対して割安になっていると判断される局面で、ETHの買い需要が高まることがある。21Sharesの提案が承認されれば、ETHの投資魅力がさらに増し、ETH/BTC比率の回復とともに価格の上昇が期待される。
さらに、今後予定されているPectraアップグレードの影響も無視できない。このアップグレードは、ETHのトランザクション効率とネットワークのスケーラビリティを向上させることを目的としており、イーサリアムの利用価値を高める可能性がある。テクニカル面での改善が投資家の信頼を高め、市場全体のETH需要を底上げする要因となるかもしれない。
SECの判断と規制の今後が市場を左右する可能性
ETH ETFのステーキング提案が市場に与える影響は大きいが、すべてはSECの判断にかかっている。これまでSECは、暗号資産に対する規制を強化する動きを見せており、ステーキングが証券と見なされる可能性について議論が続いている。もしSECが21Sharesの提案を承認すれば、ETH市場だけでなく、暗号資産業界全体における新たなETF商品の流れが生まれることが予想される。
一方で、SECの承認プロセスには不確実性がつきまとう。これまでの事例では、暗号資産関連の規制変更は慎重に進められており、特にステーキングを含む投資商品に関しては厳格な審査が行われる傾向にある。21Sharesの申請が承認されれば、他の資産運用会社も同様の申請を行う可能性が高まり、市場全体の流れが大きく変わるかもしれない。
加えて、政治的な要因もSECの判断に影響を与える可能性がある。米国政府の規制方針が緩和されるか、もしくは厳格化されるかによって、ETH ETFの今後の展開は左右される。例えば、ドナルド・トランプ政権時代には金融規制の緩和が進められたが、現在の政権下では暗号資産市場に対する監視が強化される傾向にある。こうした動向はETH市場のボラティリティに影響を与え、投資家の心理を大きく左右する要因となる。
規制当局の動向は、ETH価格の短期的な動きだけでなく、長期的な市場の安定性にも影響を及ぼす。SECがETH ETFのステーキングを認めるかどうかは、今後の暗号資産市場における規制の方向性を示す試金石となるだろう。
Source:CoinGape