ビットコインを大量に保有するMicrostrategy(マイクロストラテジー)が、新たに20億ドルの資金調達を発表した。ゼロ金利の転換社債を発行し、調達資金の大部分をビットコインの取得に充てる方針である。この動きは、同社が掲げる「ビットコイントレジャリー企業」としての戦略をさらに強化するものとみられる。
社名を「Strategy」に変更し、ビットコイン保有を積極的に進める同社は、今回の資金調達によって現在の約47万8740BTCの保有量をさらに拡大する見通しだ。共同創業者で会長のマイケル・セイラー氏は、長期的な視点でビットコインを「究極のデジタル資産」と位置付けており、今後も積極的に資本市場を活用してBTCを取得する可能性が高い。
Microstrategyの社債発行による資金調達の仕組みとその背景

Microstrategyが発表した20億ドルの転換社債発行は、同社の財務戦略の一環として注目されている。転換社債はゼロ金利の無担保優先債であり、2030年3月1日満期となる。この債券は、証券法144Aのルールに基づき、適格機関投資家向けに私募形式で提供される計画だ。さらに、投資家には最大3億ドルの追加購入オプションが付与されている。
この資金調達の背景には、Microstrategyのビットコイン戦略がある。同社は過去数年にわたり、株式や債務を活用しながらビットコインを取得してきた。今回の社債発行もその一環であり、調達資金の大部分が新たなBTC購入に充てられるとみられる。また、転換社債の特性を活かし、一定条件を満たした際には現金や株式との転換が可能であり、リスク分散の観点からも戦略的な選択といえる。
さらに、Microstrategyは2027年3月5日以降、転換価格の130%を超えた場合に社債を現金で買い戻す権利を持つ。一方で、投資家側も2028年3月1日には同社に対し、社債の買い取りを要求できる仕組みとなっている。これらの条件は、市場の状況によって大きな影響を受ける可能性があり、Microstrategyのビットコイン戦略の成否を左右する要因の一つとなるだろう。
ビットコイントレジャリー戦略のリスクと長期的な影響
Microstrategyの積極的なビットコイン購入戦略は、同社の財務戦略として明確に位置付けられている。しかし、この方針には大きなリスクも存在する。ビットコインは歴史的に高いボラティリティを持つ資産であり、価格変動が企業の財務状況に直接影響を及ぼす可能性がある。特に、ビットコイン価格が急落した場合、同社のバランスシートに与える影響は甚大だ。
さらに、転換社債を利用した資金調達は、短期的には有効な手段だが、長期的には株主価値の希薄化を招くリスクがある。転換社債は株式への転換が可能であるため、将来的に一定の条件を満たせば、既存の株主が持つ割合が減少することになる。この影響は、Microstrategyの株価や市場評価にも関わるため、慎重な運用が求められる。
一方で、同社のビットコイントレジャリー戦略が成功すれば、長期的な利益を享受できる可能性もある。共同創業者のマイケル・セイラー氏は、ビットコインの将来的な成長を強く信じており、2045年には1BTC=1,300万ドルに達するシナリオを想定している。この予測の通りに価格が推移すれば、Microstrategyの財務状況は飛躍的に改善し、同社の戦略が市場に評価されることになるだろう。
Microstrategyのビットコイン戦略が市場に与える影響
Microstrategyの動向は、ビットコイン市場全体にも波及する可能性がある。同社は現在、約47万8740BTCを保有しており、今回の資金調達によってさらに買い増しを行う見込みだ。これにより、市場における流動性が変化し、短期的な価格上昇要因となる可能性がある。特に、大口の機関投資家がビットコイン市場に参入するきっかけとなる可能性も指摘されている。
また、Microstrategyのビットコイン戦略が成功すれば、他の企業や機関投資家が同様の手法を採用するケースが増えることも考えられる。特に、企業の財務資産としてビットコインを活用する動きが広がれば、ビットコイン市場の成熟が加速する可能性がある。一方で、企業がビットコインを過度に保有することによるリスクも無視できず、価格変動が経営戦略に大きな影響を与える懸念も残る。
加えて、Microstrategyの動向は規制当局の関心を引く可能性がある。各国政府は、ビットコインおよび暗号資産市場の規制を強化する動きを見せており、企業による大規模な保有が新たな規制の引き金となる可能性もある。こうした規制の動向次第では、Microstrategyのビットコイン戦略にも影響を及ぼし、企業としての財務方針の再考を迫られる場面も想定されるだろう。
Source:Bitcoin News