トランプ家が支援する暗号資産企業World Liberty Financial(WLF)が、2025年2月20日に大規模な暗号資産取引を実行した。オンチェーンデータによれば、WLFはCoinbaseから1000万USDCを引き出し、2億WLFIトークンを取得。同時に約12万5000ドルを投じ、54万7990SEIトークンを購入したことが明らかになった。

この動きは、WLFが2月12日に発表した「マクロ戦略」に基づくものとみられ、DeFi市場での影響力拡大を狙う。WLFは、ジャスティン・サンからの7500万ドルの投資を受けるなど積極的に資金を集める一方で、トランプ家との強い結びつきにより批判も集めている。

WLFの大型投資とマクロ戦略の連動性

WLFが今回の1000万ドル規模のWLFI購入と12万5000ドルのSEI取得を行ったタイミングは、2月12日に発表された「マクロ戦略」と密接に関連している。このマクロ戦略は、WLFがDeFi市場における競争力を強化するために設定されたトークン準備金制度であり、安定性の確保と成長促進を主な目的としている。

WLFはマクロ戦略の一環として、市場変動に対する耐性を高めるため、流動性の高いトークンの取得と戦略的保有を進める方針を示していた。今回のWLFIとSEIの購入はその実践例といえ、特にWLFIは同社の中核トークンであることから、内在価値を高める狙いが透けて見える。

一方で、SEIトークンの購入は比較的小規模ながら、SEIネットワークが提供する高速取引環境やスケーラビリティに着目した動きと考えられる。WLFは単なる資産取得に留まらず、DeFiエコシステム全体での存在感を高める意図を明確に示している。

ジャスティン・サンの出資と物議を醸す背景

WLFは今回の大型投資に先立ち、トロン(TRON)創設者ジャスティン・サンから7500万ドルの出資を受けたことを公表している。サンは暗号資産業界における影響力を持つ人物であり、彼の関与はWLFにとって資金面だけでなく、業界内での認知度向上にも寄与している。

しかし、サンは過去に金融規制当局から違法な金融活動への関与を疑われた経緯があり、その存在は一部で懸念の声を呼んでいる。WLFがこうしたリスクを認識しながらもサンの出資を受け入れた背景には、資金調達と市場での影響力拡大を優先する戦略があると考えられる。

一方、WLF側は公式声明で「成長と安定性を最優先する」と強調しており、サンとの連携については事業推進の観点から正当化している。今後、サンの関与がWLFの信頼性にどのような影響を与えるかは、市場の反応次第といえる。

トランプ家によるWLF支配と市場の見方

WLFはトランプ家が60%の株式を保有し、同社の収益の75%に直接アクセスできる体制を敷いている。この事実は、WLFが単なる暗号資産プロジェクトを超え、トランプ家の経済的影響力を拡大する手段として機能していることを示唆している。

特に、ドナルド・トランプ・ジュニア、エリック・トランプ、バロン・トランプといった家族メンバーが経営に関与している点は、プロジェクトへの政治的影響力を色濃く映し出している。一方で、この強固な支配構造は市場におけるWLFの信頼性を高めると同時に、「利益の偏在」を懸念する批判を招いている。

実際、WLFの資金調達は順調に進んでいるが、一部の批評家は「トランプ家の経済的利益を優先した構造」と指摘している。このように、WLFは成長の一方で、経済と政治が交錯する象徴的なプロジェクトとなっている。

Source:Bitcoinist