ドナルド・トランプ米大統領がメキシコ、カナダ、中国からの輸入品に大規模な関税を課すと発表し、金融市場に衝撃が広がっている。特に暗号資産市場はリスク回避の動きが強まり、ビットコイン(BTC)は2%下落し、10万ドルの節目をかろうじて維持する展開となった。

さらに、イーサリアム(ETH)やXRP、ソラナ(SOL)などの主要アルトコインは6~8%の下落を記録し、CoinDesk 20 Indexも4.8%の下落となるなど、全面安の様相を呈している。各国政府の反応も厳しく、カナダのジャスティン・トルドー首相(退任予定)は報復措置を示唆。米国の貿易政策が今後の市場動向に与える影響は計り知れない。

関税措置の詳細と米国の狙い

トランプ大統領は、メキシコ、カナダ、中国に対して大規模な関税を課す決定を下した。メキシコとカナダからの輸入品には25%、中国からの輸入品には10%の関税を適用する。ホワイトハウスは、今回の措置が違法なオピオイドの流入を阻止するためであると説明しているが、実際には米国の貿易赤字削減や国内製造業の強化といった経済的要因も絡んでいるとみられる。

今回の関税には一切の例外がなく、対象国がフェンタニルをはじめとする薬物の流入を抑えない限り撤廃は行われないとされる。これは、単なる経済政策にとどまらず、安全保障上の問題と結びつけた形だ。米国内では、一部の政治家や産業界からの支持がある一方で、消費者物価の上昇や報復関税による経済への悪影響を懸念する声も少なくない。

また、中国に対する10%の関税は、トランプ政権の以前の対中貿易政策と比較するとやや抑えられた水準となっている。これは、米国経済に及ぼす負担を考慮しながらも、中国との競争姿勢を崩さない戦略とも解釈できる。とはいえ、中国側がどのように対応するかによって、関税がさらに引き上げられる可能性も排除できない。


市場の反応と暗号資産の動き

関税措置の発表を受けて、伝統的な金融市場が週末で取引を停止している中、24時間取引が可能な暗号資産市場が先行して反応を示した。特にビットコインは短時間で約2%下落し、10万ドルの大台をかろうじて維持している。

アルトコイン市場では、イーサリアム、XRP、ソラナが6~8%の下落を記録し、CoinDesk 20 Indexも4.8%下落。これは、暗号資産市場が依然としてリスク資産として扱われており、地政学的な不安や政策リスクが強まると売りが先行する傾向があることを示している。

しかし、一方で暗号資産は法定通貨や株式と異なり、政府の政策から独立した資産としての特性も持っている。これまでの歴史を振り返ると、貿易戦争や経済危機の際に短期的な売りが発生しても、中長期的には価値保存手段としての魅力が再評価されるケースが多い。今回の関税措置をめぐる混乱が長引くようであれば、暗号資産への資金流入が増える可能性もある。


今後の展開と貿易戦争の行方

米国の関税政策に対し、カナダのジャスティン・トルドー首相(退任予定)は報復措置を取る用意があると強く反発している。カナダと米国は互いに最大の貿易相手国であり、関税の応酬が本格化すれば、北米経済全体に波及する可能性がある。

一方、中国政府はこれまで、米国の関税措置に対して報復関税で応じる姿勢を示してきた。今回の10%の関税は過去の貿易戦争時に比べると低めの水準ではあるが、中国側が同様の関税を課すか、それとも異なる形で対抗するかが注目される。特に、半導体やハイテク分野での輸出制限といった形での対抗策が取られる可能性もある。

また、関税がもたらす影響は貿易だけにとどまらず、米国内のインフレ動向や金融政策にも影響を及ぼす。関税によって輸入コストが上昇すれば、インフレが加速する可能性があり、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ政策にも影響を与えるかもしれない。

トランプ政権が貿易戦争をどこまでエスカレートさせるのか、各国がどのように対応するのか、そして暗号資産がこの状況の中でどのような動きを見せるのか。市場関係者は今後の展開を慎重に見極める必要がある。

Source:CoinDesk