エルサルバドル議会は、国際通貨基金(IMF)との14億ドルの融資契約に基づき、ビットコイン法の改正を承認した。これにより、企業はビットコインの受け入れを任意とし、税金の支払いは米ドルに限定されることとなった。
一方、ナジブ・ブケレ大統領はビットコインの購入を続けており、2025年に入ってから52BTCを追加取得し、総保有量は6,055BTCを超えている。政府はドルコスト平均法を用いて毎日1BTCの購入を継続している。IMFはエルサルバドルに対し、ビットコインの公的な役割の縮小を求めているが、政府は引き続きビットコインの蓄積を続ける意向を示している。
IMFの圧力とエルサルバドルのビットコイン政策の変遷
エルサルバドルは2021年、世界で初めてビットコインを法定通貨として採用したが、IMFとの交渉を経て、その立場を修正する動きを見せている。IMFとの14億ドルの融資契約は、同国の財政安定を図る上で重要な要素となっており、その条件としてビットコインの公的な役割を縮小する措置が求められた。
新たな法律により、企業に対するビットコインの受け入れ義務が撤廃され、公共部門の暗号資産関連活動が制限された。これは、ビットコインの強制的な普及に対する国際社会からの懸念を受けた措置とみられる。さらに、税金の支払いが米ドルに限定されることで、国家財政の安定性を強調する狙いがある。
しかし、ブケレ政権は一貫してビットコインへの信頼を示し、政府としての購入を続けている。この姿勢は、IMFの圧力と国内のビットコイン支持層の間でバランスを取るための戦略とも考えられる。エルサルバドル政府は、法的な規制を設けつつも、依然としてビットコインを重要な金融ツールと位置づけている。
ブケレ政権のビットコイン購入戦略とその意図
エルサルバドル政府は、2022年後半からドルコスト平均法を採用し、毎日1BTCずつの購入を続けている。これは市場の変動に関わらず一定額を投資することで、長期的な保有コストを平準化する手法だ。さらに、2月1日には通常より多い2BTCを取得し、同国のビットコイン総保有量は6,055BTCを超えている。
政府の公式な説明では、ビットコインの保有は国家の準備資産の一環であり、金融包摂の推進に寄与するとされる。ブケレ大統領は「70%の国民が銀行口座を持たない状況において、デジタル資産の利用は必然」との見解を示しており、ビットコインが従来の金融システムにアクセスできない人々にとって重要な役割を果たすと主張している。
しかし、エルサルバドルのビットコイン政策にはリスクも伴う。過去には価格暴落の影響で国家財政に悪影響を及ぼすとの指摘もあり、一部の国際金融機関は同国の信用リスクを警戒している。ブケレ政権はこうした批判を意に介さず、ビットコインの蓄積を継続することで、将来的な価格上昇を期待している可能性がある。
エルサルバドルの経済に与える影響と今後の展望
ビットコイン政策の変更は、エルサルバドル経済に短期的な影響をもたらす可能性がある。企業のビットコイン受け入れ義務が撤廃されたことで、暗号資産を活用する事業者の負担が軽減される一方、ビットコインを日常的な決済手段として利用する層の利便性は低下するかもしれない。
また、政府が「Chivo Wallet」への関与を縮小することで、国民のビットコイン利用環境が変化する可能性がある。政府の補助なしに運営が継続されるかは不透明であり、エコシステムの持続性が問われるだろう。一方で、ブケレ政権のビットコイン購入戦略が長期的に成功すれば、国家資産の価値向上につながる可能性もある。
IMFとの合意を受け、エルサルバドルのビットコイン政策は転換点を迎えている。ビットコインの国家運用を継続しながらも、国際的な信用を維持するための微調整が行われる中、同国の金融戦略が今後どのように進化していくのか注目される。
Source:DL News