米カリフォルニア拠点のKULR Technology Groupが、企業資産としてのビットコイン購入をさらに拡大した。同社は昨年12月に約2,170万ドルで217.18BTCを取得し、先月も2,100万ドル相当の追加購入を実施。そして今週、新たに1,000万ドル分のビットコインを取得し、総保有量は610.3BTCに達した。

現在の市場価格を基にすると、KULRのビットコイン資産は約5,900万ドル相当となる。しかし、同社の積極的な投資にもかかわらず、株価は4%以上下落し、1株あたり2.26ドルで取引されている。同社は余剰資金の最大90%をビットコインに充てる方針を明言しており、MicroStrategy(現Strategy)など他の公開企業と同様の戦略を採用している。

ビットコインを企業資産として組み込む動きは、KULRだけにとどまらない。ソーシャルメディアマーケティングのThumzup、ヘルスケアのCosmos Health、動画配信プラットフォームのRumbleなども、暗号資産を企業戦略に取り入れ始めている。

企業資産としてのビットコイン活用 KULRの長期的な狙い

KULR Technology Groupは、航空宇宙・防衛向けのエネルギー貯蔵技術を提供する企業であるが、近年は資産運用の一環としてビットコインを積極的に購入している。特に昨年12月以降、短期間で約610.3BTCを取得し、企業資産の一部として組み込んだ。発表によれば、余剰資金の最大90%をビットコインに充てる方針を維持しており、単なる投資という枠を超えた戦略があることが伺える。

同様の手法は、MicroStrategy(現在のStrategy)が先駆けとなり、同社は約478,740BTCを保有するまでに至った。ビットコインは流動性が高く、インフレヘッジの手段として機能する可能性があるため、KULRも長期的な資産保全手段として採用していると考えられる。さらに、同社がエネルギー貯蔵技術を手がけていることを踏まえると、電力需要と関わりの深い仮想通貨業界とのシナジーも視野に入れている可能性がある。

しかし、こうした戦略が即座に市場で評価されるわけではない。KULRの株価は今回の追加購入後も4%以上下落し、投資家の反応は慎重だ。ビットコイン価格の変動リスクが企業財務に与える影響を懸念する声もあり、同社の株価が長期的にどう推移するかは、今後の市場動向次第といえる。

企業のビットコイン採用が広がる背景とリスク

KULRのように企業がビットコインを資産として組み込む動きは、アメリカの上場企業を中心に加速している。MicroStrategyだけでなく、ThumzupやCosmos Health、Rumbleといった企業もビットコインを購入し、財務戦略の一部として活用し始めた。この背景には、米ドルの購買力低下や、従来の現金資産ではインフレに対抗しづらいという課題がある。

一方で、ビットコインの価格変動は激しく、企業財務にリスクをもたらす可能性もある。特に、米国の金融規制当局は暗号資産の取り扱いに対して厳格な監視を強めており、今後の政策変更が企業の財務戦略に影響を及ぼす可能性も否定できない。たとえば、ビットコインを企業資産として扱う場合、会計処理のルール変更や税制の変化が財務リスクとなることもあり得る。

それでも、Strategyが示したように、ビットコインを大量に保有することで長期的な利益を見込める可能性があることは、多くの企業にとって魅力的だ。KULRの決断が他の企業にどのような影響を与えるかは、今後の市場の動向やビットコインの価格推移次第といえるだろう。

KULRの戦略は企業財務の新たな潮流となるか

KULRが示した「余剰現金の90%をビットコインに投資する」という方針は、企業の財務戦略において大胆な選択といえる。一般的な企業は流動性を確保するため、現金や短期資産を一定量保有するが、KULRはその大半をビットコインに置き換えようとしている。この戦略は、MicroStrategyの成功例が後押ししている可能性があるが、すべての企業に適用できるとは限らない。

特に、KULRの事業はエネルギー貯蔵技術に関連しており、ビットコインマイニング業界との関係性を持つ可能性も考えられる。エネルギー効率の高いバッテリー技術は、マイニング業界において電力コスト削減の手段として求められており、KULRがこの分野でビットコインを活用する戦略を持っているのか注目される。

しかし、ビットコインの市場価値は変動が激しく、短期的には財務リスクが高まる可能性がある。KULRの株価下落は、市場がこのリスクを懸念していることを示唆している。今後、同社がどのようにビットコインを活用し、企業価値を向上させるのかが問われるだろう。ビットコインを企業資産として持つことが、短期的な市場評価にどのような影響を与えるか、引き続き注視が必要だ。

Source:Decrypt