バイナンスの創設者であるチャンポン・ジャオ(CZ)氏は、最近のLIBRAトークンの急落に関して自身の見解を示した。彼はX(旧Twitter)上で、トークン選択時に注意すべき4つのポイントを共有し、特にトークンエコノミクス(トークン経済)の重要性を強調した。このコメントは、有名人や政治家に関連するトークンが急増する中で発表されたものである。

LIBRAトークンは、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領がX上で支持を表明したことで注目を集めた。しかし、その後の投稿削除やプロジェクトの正当性に対する疑念が広がり、トークン価格は4.50ドルから0.50ドルへと急落した。オンチェーン分析によれば、LIBRAの総供給量の82%が少数のウォレットに集中していたことが明らかになり、内部者による資金引き出しが価格下落の一因とされている。

CZ氏は、トークンの支持や投資を行う際には、トークンエコノミクスを十分に理解し、慎重なリサーチが必要であると述べている。また、オンライン上で影響力を持つ人物は、トークンの支持に際して注意を払うべきだと指摘した。この発言は、投資家やビジネス関係者にとって、トークン選択時の重要な指針となるだろう。

LIBRAトークン暴落の背景と内部者の動向

LIBRAトークンの急落は、単なる市場の変動ではなく、内部者の動きが大きく影響を及ぼした可能性が指摘されている。特に、オンチェーンデータから明らかになったのは、LIBRAの総供給量の82%がごく少数のウォレットに集中していた点である。こうした状況は市場操作の疑念を生む要因となり、投資家の不安を招いた。

さらに、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領がXでLIBRAに関する投稿を行ったことで、プロジェクトへの関心が急上昇した。しかし、その後投稿が削除されたことで市場は混乱し、資金流出が加速。これにより、時価総額40億ドルを誇っていたLIBRAは短期間で90%以上の下落を記録した。

この動きの背後には、創設者ジュリアン・ペフと一部の大口投資家が関与しているとされ、特に8700万ドル相当の資金が一部のアドレスへと移動したことが確認されている。結果として、多くの投資家が損失を被り、LIBRAは「史上最大の政治的ラグプル」として記録されることとなった。

CZの発言が示唆するトークン市場のリスクと課題

バイナンス創設者のCZは、LIBRAの事例を通じてトークン経済の重要性を強調した。彼がX上で述べた4つのポイントの中でも特に注目されるのは、影響力のある個人がトークンを支持する際のリスクである。特定の個人が推奨することで、一時的に市場が過熱し、適正な評価がされないまま価格が急騰する事態が発生しやすい。

この点は、有名人によるトークンの発行が相次ぐ現状とも密接に関係している。たとえば、トランプ元大統領の家族が発行した「TRUMP」トークンや「MELANIA」トークンは、注目を集めて急成長したが、その後価格が大きく変動し、多くの投資家が損失を被った。このようなミームコインの乱立は、投資の判断基準を曖昧にし、市場全体の不安定性を高める要因となっている。

CZの発言は、単なる警鐘にとどまらず、トークン市場全体の持続的な成長に向けた指摘ともいえる。市場の透明性を高めるためには、プロジェクトのトークンエコノミクスの設計や、影響力のある個人による発言の適正な管理が求められる。投資対象の見極めがますます重要になっている状況の中、慎重なリサーチが欠かせない。

バイナンス創設者自身も巻き込まれたミームコインの現象

CZはLIBRAの件についてコメントする一方で、自身も思わぬ形でミームコイン市場に巻き込まれそうになった。彼がXに自身の飼い犬であるベルジアン・マリノア犬「ブロッコリー」の写真を投稿すると、その犬の名前を冠した「BROCCOLI」トークンが即座に誕生し、価格が160%以上急騰する事態となった。

この動きは、特定の人物の影響力がミームコイン市場に及ぼす影響を端的に示している。CZ自身はこの現象に対し警戒感を示し、トークンの公式コントラクトアドレスを求める声を拒否した。これにより、新たな「失敗する有名人トークン」の誕生を未然に防ぐ形となったが、同様の事態が今後も起こる可能性は十分にある。

この一件を通じて、影響力のある人物の発言や投稿が市場の動向を大きく左右する現実が改めて浮き彫りとなった。特に暗号資産市場では、SNSを通じた情報拡散の速度が速く、一度注目を集めると短期間で価格が急上昇しやすい傾向がある。こうした状況は、一般の投資家が適切な判断を下すことを難しくし、価格操作や市場操作の温床となる可能性を含んでいる。

CZは、LIBRAの事例を教訓とし、今後も暗号資産市場における適正なトークンエコノミクスの重要性を訴えていくことが予想される。市場の健全な成長のためには、個人の影響力が過度に作用することを防ぐ仕組みの整備が不可欠といえるだろう。

Source:CoinGape